ありがとう、川村カオリ
私にとって川村かおりは青春でした。
繰り返し川村かおりの歌を聴くことで、「川村かおりの世界」を分有してきました。中学校から高校にかけての多感な時期に出会ったからこそ、影響力も大きかったのです。
はじめて買ったCDが、川村かおり『見つめていたい』でした。中学生の時です。私の中学校時代はすさんでいました。生きられない生が爆発していました。いじめられたり、いじめたり、登校拒否もしていました。生きるのがしんどかった、いっそのこと死んでしまいたいと思っていた中学生の私の気分に、川村かおりさんの歌はぴったりでした。川村かおりさんの歌に中学生の私は支えられていました。川村カオリさんが壮絶なイジメを受けていたことは最近知りました。いじめを受けたという共通経験で、私は川村かおりさんとつながっていたのだといまにして思います。
そう考えると、川村かおりさんの初期の歌には、いじめられた経験を昇華したものが多いように思います。いじめられたがゆえに、人間に裏切られた経験があるからこそ、「愛をあげたい」「メリーゴーラウンドに乗ってる君のことが好きだよ」といった、くさいぐらいに、歌に、歌詞に人を恋う気持を託していたのではないかと思います。
他方で、中学生の時には湾岸戦争がありました。国際貢献という名の下に日本が多国籍軍に資金提供し、日本国民は戦争に加担したのがこの時期でした。「戦争が起きたら」は私にとっての反戦歌でした。
こうしてみると、Love&peaceが川村かおりの精神だったことにあらためて気づかされます。
その後、SORROW時代は、川村カオリから離れていました。
13年ぶりのアルバム『K』が発売になりました。私にとっては久しぶりの再開でした。私も連れ合いと結婚して、2歳の息子の父親になっていました。川村カオリさんも、るちあちゃんの母親になっていました。これからは一緒に親として同時代に生きて、川村カオリさんの歌を聴き続けることになるのかな、川村カオリさんの世界の深化を、自分と子どもの成長とともに見守りたいと思っていました。
初期川村かおりの世界には、「みんな僕のせいさ」のように、世界から孤立して自責する、強がっている「僕」がいました。しかし、『K』には、特に代表作「バタフライ」には、本来的に弱い人間が、その弱さを見つめながら、それを梃子に連帯して「僕たち」としてこの世界と折り合いをつけて行こうとする私がいました。私はそこに川村カオリさんの成長を見ていました。それは私自身の成長の確認でもありました。
奇麗な色で流れていく
街も人も 僕さえも
この世界の悲しみはそんな風に消えてくんだよ
君の胸や腕の痛みもいつかは癒えてく様に
僕たちの心は強くて今を越えてく だから
(バタフライ)
メディアでは、乳がんと闘ったロック歌手の死去というかたちで取り上げられています。そうした報道には違和感があります。川村カオリさんは乳がん予防の教訓として死んだわけではないのです。川村カオリさんはさまざまな顔をもって生きていたのであり、その生き方を一面化することに、その人の生を安易に意味付けようとする暴力を感じるのだと思います。
川村カオリさんの死と私が折り合いをつけるにはもうすこし時間が必要に思います。
いま、追悼特番「川村カオリのためのオールナイトニッポン」を聴き終えたところです。猛烈に川村カオリが恋しい。もうあなたに二度と会えないかと思うと、遺された娘のルチアちゃんのことを思うと胸が苦しくなりますが、いまはただご冥福をお祈り申し上げます。
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